HINANZU.com特別記事:避難経路図は「機能美」の極致である

避難経路図は「単なる法定掲示物」ではなく、「命を守るための最高の情報デザイン」として捉えるべき。

25年以上のキャリアを持つグラフィックデザイナーの知見を基に、法令遵守の枠を超え、緊急時に確実に機能する避難経路図の作成哲学を、HINANZU.comの視点からご紹介します。


避難経路図の設置は義務ですが、私たちが追求すべきゴールは「義務の履行」ではありません。デザインによって情報伝達の速度を極限まで高めることです。

真に優れたデザインとは、パニック状態にある人が、立ち止まることなく次の行動を瞬時に理解できる状態を作ることです。

【徹底】図面情報の「引き算」
建築図面の流用は禁物です。緊急時に不要な情報はすべてノイズとなります。

残す情報(Signal):
壁、柱、主要な扉、部屋名、階段、主要な動線

消す情報(Noise):
細かい寸法線、家具の配置、配線図、装飾的な要素


「北を上にする」という地図の常識は、避難経路図では通用しません。

地図上の方向と、目の前の現実の方向を完全に一致させる「正対(せいたい)表示」(ヘッズアップ)は、デザインの好みではなく、緊急時における究極のUX(ユーザーエクスペリエンス)です。

制作の必須工程:
地図を設置する壁の向きに合わせて、データ自体を回転させて作成します。

脳内変換の排除:
「地図を回して考える」負荷をゼロにします。

判断ミスの防止:
一刻を争う場面での致命的な方向間違いを防ぎます。


誰にでも、どのような状況でも伝わるための3つの柱です。

カラーユニバーサルデザイン(CUD)
色覚の多様性に配慮し、緑と赤の区別が困難な方でも情報が伝わるようにします。

  • 色相だけでなく、明度と彩度のコントラストを活用。
  • 色のみに頼らず、ハッチング(模様)や線の太さで情報を多重化。

アイコンの簡素化とJIS規格
認知の一貫性を守るため、非常口・現在地・消防設備などはJIS規格(JIS Z 8210)に準拠します。過度な装飾を排し、一目で理解できる究極の簡素さを追求します。


グラフィと避難ルートの「2方向」明示
メインルートに加え、火災等で塞がれた場合に備えた「サブルート」を明確に示します。 「常に2方向への逃げ道がある」という保証が、利用者の安心感と生存確率を高めます。


優れたデータも、設置方法を誤れば機能しません。

チェック項目ポイント
設置場所エレベーターホール、階段入口、突き当たりなど、人が立ち止まる要所。
設置高さ基本は床面から1.5m(成人目線)。施設利用者(車椅子、子供など)に応じて調整。
言語表記日本語と英語の併記を徹底(インバウンド対応)。
【最重要】現地プレビュー印刷前に必ず設置予定の壁の前に立ち、「地図の右=現実の右」が成立しているかを歩いて確認する。

私たちは現状に満足せず、次世代の避難図のあり方を模索し続けます。

制作3D化
2D図面を立体図にすることによる、空間認識速度の向上。

デジタル化
サイネージ化による表示のダイナミクスと、リアルタイム情報の連携。

判要配慮者対応
高齢者、視覚障がい者などに特化した、専門的な情報提示のデザイン。

私たちの哲学を、あなたの施設に実装しませんか?

HINANZU.comを運営する株式会社キタデザは、「避難経路図は命の地図である」という信念のもと、制作業務を行っています。

今回ご紹介した「情報の引き算」や「正対表示」は、手間のかかる工程ですが、利用者の安全のためには決して省略できないものです。 私たちはプロフェッショナルとして、美しく、分かりやすく、そして何より「使える」避難経路図を、一つひとつ丁寧にデザインいたします。

新規作成はもちろん、既存図面の診断やリデザインも承っております。ぜひお声がけください。

投稿者プロフィール

hinanzu.com
hinanzu.com避難図研究所 所長
グラフィックデザイン好きな40代。趣味は色んな地域へ行くこと。 「機能美は最高の安全性能」という言葉に共感し、特に避難経路図のような「いのちを守るデザイン」に強く魅了されています。
旅先で出会う、その土地ならではの機能的なデザインに触れるのが楽しみ。