【ざんねんな避難図】ガチャガチャの裏に隠された真実…デザイン歴25年のプロが物申す!

こんにちは、避難図の向こう側に見える「安全への意識」を常に問い続ける、グラフィックデザイナーの北村です。

デザインの世界に身を投じて25年以上、現場で叩き上げられてきた私の目には、街中のあらゆるサインが「メッセージ」として飛び込んできます。今日は、先日娘と一緒に訪れた大型スポーツ用品店で遭遇した、ある「残念な避難経路図」についてお話しします。

皆さんは、買い物中にふと壁面にある避難図に目を留めたことはありますか? おそらく、ほとんどの方が「No」でしょう。だからこそ、私たちデザイナーや施設管理者は、いざという時に「確実に目に入る」「一瞬で理解できる」ものを作らなければなりません。

しかし、今回見つけた事例は、その真逆を行くものでした。

まず、この写真をご覧ください。 鮮やかなブルーの壁、楽しげな地元の野球チームのポスター。そして、その横に鎮座する避難経路図。 一見、綺麗に配置されているように見えますが、視線を下に落とすと……そこにはズラリと並んだガチャガチャ(カプセルトイ)のマシンが。

これは、デザイナーとして、そして一人の親として言わせていただきたい。 「そこは、塞いではいけない場所です」

設置場所はエントランス部分。一番人が通り、目につきやすい一等地です。しかし、ガチャガチャのマシンが前に置かれていることで、避難図への物理的なアクセスが阻害されています。もし火災が発生し、煙が充満する中で、子供たちが夢中になるマシンの向こう側にあるこの図を、大人は冷静に確認できるでしょうか? 「ただ設置義務があるから貼っただけ」という、施設側の「とりあえず感」が透けて見えてしまい、非常に残念です。

次に、図面の中身を見てみましょう。 驚くほどシンプルです。四角い枠に、赤い矢印。 「シンプル・イズ・ベスト」という言葉はデザインの鉄則ですが、それは「必要な情報を削ぎ落とす」という意味ではありません。「情報を整理して分かりやすくする」ということです。

この図面には、自分が今いる広い店内の「どこ」にいるのかを判断するためのランドマークが一切ありません。レジはどこ? シューズ売り場は? 入り口はどっち? ただの四角い箱の中に線を引いただけの図面では、パニック状態の人間には「単なる幾何学模様」にしか見えません。必要なのは、空間を認識させるための「アイコン」や「目印」です。これでは、せっかくの避難図がただの飾りになってしまっています。

もちろん、長年デザインを見てきた私ですから、悪いところばかりを指摘して終わるつもりはありません。この避難図にも、いくつかの「良い点」は存在します。

まず、「視認性の高い配色」です。 白地に黒のライン、そして重要な避難経路は「赤」で示されています。このコントラストの高さは、薄暗い状況でも図面を認識させる上で非常に重要です。

次に、「ピクトグラムの正しさ」。 上部に大きく配置された緑色の「非常口」マーク(ピクトグラム)。これは国際標準化機構(ISO)でも採用されている世界共通のデザインです。誰が見ても「あ、ここは逃げるための情報だ」と直感的に分かります。

そして、「英語表記の併記」。 「避難経路図」の下に「Escape Route」としっかり書かれています。外国人観光客も多い昨今、日本語が読めない方への配慮がなされている点は評価できます。

良い要素を持っているにもかかわらず、設置状況と内容の具体性の欠如によって、すべてが台無しになっている。それが今回の事例です。 素晴らしいポスターを作っても、誰も見ない路地裏に貼っては意味がないのと同じで、避難図も「見えて」「伝わって」初めて価値が生まれます。

このスポーツ用品店が、いつかこの「もったいない状況」に気づき、ガチャガチャの配置を変え、図面に「レジ」や「入り口」のアイコンをひとつ足してくれることを願ってやみません。

皆さんも、街で避難図を見かけたら「もし今地震が起きたら、これで逃げられるかな?」と想像してみてください。デザインの良し悪しが、命を守る鍵になることに気づくはずです。

避難経路図は「命を守るデザイン」です

「とりあえず作っておけばいい」と考えていませんか? HINANZU.comを運営する株式会社キタデザでは、単に図面をトレースするだけでなく、設置場所の環境、見る人の心理、そして空間の特性を考慮した、「本当に役に立つ避難経路図」を制作しています。

25年以上のキャリアを持つ叩き上げのデザイナーとして、御社の施設の安全性をデザインの力でアップデートします。 現状の避難図に不安がある方、新規オープンで確実なものを作りたい方、まずはお気軽にご相談ください。

投稿者プロフィール

hinanzu.com
hinanzu.com避難図研究所 所長
グラフィックデザイン好きな40代。趣味は色んな地域へ行くこと。 「機能美は最高の安全性能」という言葉に共感し、特に避難経路図のような「いのちを守るデザイン」に強く魅了されています。
旅先で出会う、その土地ならではの機能的なデザインに触れるのが楽しみ。