【金沢】黒の静寂と機能美。クロスゲート金沢に見る、空間を「格上げ」する避難図デザインの流儀

こんにちは、hinanzu.com を運営している北村です。 グラフィックデザイナー歴25年以上の私が、ついつい職業病でチェックしてしまう街中のデザイン。

今回ご紹介するのは、金沢の新しい玄関口「クロスゲート金沢」で見つけた、思わず感心した「避難経路図」です。
一見モダンな黒いプレートですが、そこにはプロの視点で見ると「なるほど」と思わせる、美学と機能性が詰め込まれていました。

その「すごさ」をまとめました。

ハイアットなどの高級ホテルが入るプレミアムな施設において、派手な色の避難図は空間のノイズになりかねません。この避難図は、その課題を見事に解決しています。

  • しっとりとしたマットブラック(艶消し黒)を採用
    • テカりを抑えた上品な質感で、高級感のある空間に調和します。
  • 壁面素材との美しい対比
    • 温かみのある左官仕上げの壁に対し、ソリッドな黒いプレートが配置されることで、空間全体が引き締まります。

デザイン性だけでなく、いざという時に命を守る「機能」も追求されています。

  • 「黒地に白」のハイコントラスト
    • 火災で煙が充満した薄暗い状況下でも、白いラインが浮かび上がり、経路の輪郭がはっきりと認識できます。

私がプロとして最も感銘を受けたのが、多様な「見え方」への配慮です。 日本では、男性の約20人に1人、女性の約500人に1人が色覚に特性を持つと言われています(出典:日本眼科学会、CUDO公開データ)。 そうした方々も含め、誰にとっても見やすい工夫が随所に施されています。

  • 色に頼らない「形(アイコン)」での区別
    • 「赤と黒」など、区別しづらい色の組み合わせだけに頼らず、形状で情報を伝えています。
      • 現在地 → 単なる点ではなく「マル ●」
      • 消火器 → 四角いアイコン「シカク ■」
    • 下のシミュレーション画像(D型色覚の見え方)のように色が沈んで見えても、「形」で何があるか判別可能です。
  • 【ここが凄い!】非常口アイコンの「白フチ」
    • 非常口の緑色のアイコンをよく見ると、周囲に必ず白いフチ取り」が施されています。
    • このひと手間により、背景が暗くても、どのような色覚特性を持っていても、アイコンと背景の境界が明確になり、どんな環境下でもくっきりと見えやすくなっています。
  • 絶妙なウェイト(太さ)のゴシック体
    • 視認性を確保しつつ、デザイン性を損なわない太さを選択。
  • 美しい英語併記
    • インバウンドの多い金沢にふさわしい、グローバル基準のレイアウトです。

美しいだけでなく、誰一人取り残さないための機能がデザインに溶け込んでいる。 クロスゲート金沢の避難経路図は、まさに「機能美」の好例でした。

参考:クロスゲート金沢(ホテル、カフェやレストラン、食物販ゾーンが集まる商業エリア、分譲マンションから構成される複合施設)

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HINANZU.comを運営する株式会社キタデザでは、「避難経路図は命の地図である」という強い信念のもと、制作業務を行っています。

施設のブランドイメージを高める洗練されたデザインと、緊急時に誰にとってもわかりやすいCUD(カラーユニバーサルデザイン)の視点。 この2つを高い次元で両立させる避難図制作は、私たちプロフェッショナルにお任せください。

新規オープンから既存図のリデザインまで、皆様の施設に最適な「命の地図」をご提案いたします。

投稿者プロフィール

hinanzu.com
hinanzu.com避難図研究所 所長
グラフィックデザイン好きな40代。趣味は色んな地域へ行くこと。 「機能美は最高の安全性能」という言葉に共感し、特に避難経路図のような「いのちを守るデザイン」に強く魅了されています。
旅先で出会う、その土地ならではの機能的なデザインに触れるのが楽しみ。