
ホテルで目にする「避難経路図」。普段は意識しないかもしれませんが、あるホテルの案内図は、まさに「伝えるデザイン」のお手本でした。
緊急時にこそ真価を発揮する、この優れたデザインのポイントをご紹介します。
1. 究極のシンプルさ
余計な装飾や情報が一切なく、壁、扉、現在地、避難経路のみで構成されています。緊急時に「見て、すぐに理解できる」ことを見事に実現しています。
2. 「無意識に目に入る」絶妙な設置場所
設置場所は、エレベーターホール前のアメニティカウンター上。エレベーターを待つ間などに自然と視界に入り、利用者に「避難経路図がここにある」と無意識にインプットさせます。万が一の際の安心感に繋がる、巧みな配置です。
3. 誰でもわかる「多言語&アイコン」
「避難経路図 / Emergency Exit」のように日英が併記され、外国人宿泊者にも配慮されています。さらに、消火器やAEDはピクトグラム(絵文字)も併用。言語を問わず、誰もが直感的に理解できるデザインです。
4.「プロの技」:色と情報
さらに、「色の使い方」と「情報の網羅性」も秀逸です。
- 秀逸な色分け: 基本はモノクロですが、重要な情報だけ色分けされています。「青=現在地(自分)」、「赤=避難経路・消火器(行動)」という明確なルールは、パニック時でも直感的な判断を助けます。
- AEDも網羅: 火災だけでなく、「AED」の位置も明記。これにより、急病時にも役立つ「緊急時対応マップ」として機能しており、施設の高い安全意識が伺えます。
まとめ
優れたデザインとは、美しさだけでなく「いかに迅速に、正確に、直感的に情報を伝えられるか」が命です。この一枚の避難経路図は、そのすべてを高いレベルで満たした、まさに「デザインの鑑」と言えるでしょう。

投稿者プロフィール

- 避難図研究所 所長
- グラフィックデザイン好きな40代。趣味は色んな地域へ行くこと。 「機能美は最高の安全性能」という言葉に共感し、特に避難経路図のような「いのちを守るデザイン」に強く魅了されています。
旅先で出会う、その土地ならではの機能的なデザインに触れるのが楽しみ。
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